宮崎の学生たちの「推し店」、幸せになるアサイーボウルの秘密
2025.3.5

宮崎の良いお店を紹介する「さんぽ宮崎」。

本日は宮崎市橘通東にあるスイーツ店「moon(ムーン)」をご紹介します。

2024年に都心で流行し、Z世代の女性たちから人気のデザート「アサイーボウル」が食べられるお店です。

2024年7月にオープンし地元学生たちからも大人気、moonのアサイーボウルの魅力とは?

共同でオーナーを務め、接客と調理もこなす折田さんと蓑崎(みのさき)さんへお話を伺いました。

オーナーの折田さん

オーナーの蓑崎さん

宮崎でアサイーボウルの魅力を広める

「アサイーボウル」は「2024年流行語大賞」でノミネートされるほど2024年に流行、Z世代の女性を中心に人気のある、ブラジル発祥のデザートです。

ブラジルのアマゾン原産の植物、アサイーをスムージーし、その上にフルーツ、グラノーラなどをトッピングしていくのが一般的なアサイーボウル。

アサイー自体には甘味や苦味といったクセもないため、様々な食材と相性が良く、高い栄養価、特に鉄分が豊富なことから、健康と美容の面からも人気の食べ物です。

アマゾン原産のアサイー

moonは『食べ物で宮崎の人たちを幸せにする』ことを目標とした「Food Happy Miyazaki Project」に参画している店舗で、都会で流行している美味しいものを宮崎の人たちにも届けたい、そのような思いでオープンしました。

宮崎市橘通東のmoon

「moonという店名は、僕が宮崎市内で経営しているショットバー『Shaula(シャウラ)』と『Sirius(シリウス)』の店名が、どちらも夜空に関連があることから、月のmoonに決めました。ワッフルも販売しているので、月の形にも似ているからちょうど良いかなって。誰もが覚えやすい店名だから良かったと思います。」と店名について話す折田さん。

店内の様子

moonは、「親しみやすさ」をだすことを心掛けているそうです。

「テーブルは対面で、どこからでもお客様と話せる形にしています。最初はバックヤードスペースのために、壁をつくろうと計画をしていました。でも、お客様と対面できる形が安心するし、親しみやすいと思って。お客様同士の会話はもちろんですが、私たち従業員との会話も楽しんでもらえる空間づくりを意識しています。」

蓑崎さんは店内のこだわりを話します。

カウンターの様子

テーブル席では目の前で調理してくれる、この距離感。

地元の学生から県外の観光客まで、お客様との会話も弾みます。

手書きのメニューボード

店内の手書きメニューボードからも、moonのあたたかさが伝わります。Instagramアカウントでも、できる限り親しみやすい発信をしていることも特徴です。

流行だけで、終わらせたくない

アサイーボウルの流行は2度目と言われています。

2014年に大きく流行、10年後の2024年に再注目され、今でも流行の輪が広がっています。

タピオカ、マリトッツォなど、スイーツ系の流行サイクルは早いですが、宮崎ではアサイーボウルを一過性のもので終わらせたくないと蓑崎さんは話します。

アサイーボウルの流行について話す蓑崎さん

「確かに、都心でのアサイーボウルの流行は、いつまでも続かないかもしれません。でも宮崎県とアサイーボウルはとても相性が良いと思います。アサイーボウルはハワイの定番の食べ物となったのだから、南国の宮崎でもアサイーボウルを定番にできるのでは、と思っています。」

アサイーボウルのスムージは、冷凍のアサイーを丁寧にミキサーにかけてつくる

宮崎県にはマンゴー、地鶏、チキン南蛮といったイメージが強く、フルーツをたくさん食べられるというイメージがあまりない、と蓑崎さんは指摘します。

「僕たちの目標は、『食べ物で宮崎の人たちを幸せにする』こと。まずはアサイーボウルを通じて、宮崎の人たちの定番になってほしい。アサイーボウルは健康と美容に良い栄養価がたくさん入っているので、デザートではなく食事としても満足できると思います。」と、自信をもって話す折田さん。

調理は折田さんも蓑崎さんも対応する

アサイーボウルには様々なフルーツが豊富に入っており、moonの一番人気のアサイーボウルもフルーティーボウルです。華やかで美味しいフルーツは安定した人気だとわかります。

アサイーボウルには健康と美容に必要な栄養素も凝縮されている

moonオススメのスペシャルボウルは、アサイーベース、グラノーラ、バナナ、ミックスベリー、マンゴー、アロエ、ミックスナッツが入っており、上にはチアシード、ココナッツファイン、クコノミ、ハチミツと、フルーツも栄養も特盛のアサイーボウルです。

フルーツもたっぷり、moonのスペシャルボウル(1500円)

このスペシャルボウルのように、様々な食材にも相性が良いアサイーボウル。

宮崎にはライチ、柑橘類、パパイアなど南国特有の美味しいフルーツが豊富にあり、宮崎フルーツとの相乗効果も高いため、夢がひろがります。

「お腹いっぱいで喜ぶ顔に」食べ物でつながる縁

折田さんが自信を持ってアサイーボウルを進める理由は、もう一つあります。

それは、通常のアサイーボウルよりも驚くほど量が多いこと。

通常の店舗より、量は約2倍程度(店舗内でのみ)。

テーブルに置かれた時の驚きは、店舗でしか味わえません。

「最初は紙の容器で提供を予定していましたが、紙の容器だと水分を含んでふやけてしまうのが気になる、となって。次は透明の容器で提供していたんですが、これではお店で食べる時に味気ない印象だし、サイズも物足りないって。じゃあ木の容器にって変更したら、これじゃあサイズが小さいって。結局、今のこの大きなサイズで落ち着きました。」と笑う蓑崎さん。

大きくなっていったmoonのアサイーボウルのお皿

量にこだわるのは折田さん。その理由を話してくれました。

「まだ開店当時は小さな器で提供していました。ある時、アサイーボウルを食べた学生が『ラーメンを食べに行きたい』と言ってたんです。何だか負けた気がして悔しくて笑。アサイーボウルはラーメンを食べるよりも健康に良いんだし、ダイエットにもなるんだから、ここでお腹いっぱいにしてやろう、って。

大きく提供するようになってから、女の子たちはアサイーボウルを一食として捉えてくれるようになりました。特に学生さんたちが『もうお腹いっぱい!』と笑顔で言った時は『よしっ!』と思います。」折田さんは目を輝かせながら、学生との思い出を話します。

学生との思い出を話す折田さん

ちなみに、食べきれない時はテイクアウト用に包み直してくれます。

2025年2月現在、アサイーは原油価格の高騰とブラジルの干ばつの影響で品薄状態です。moonは独自の仕入れルートがあるため、まだ入荷に影響は出ていませんが、量と販売価格を維持することも、かなり大変とのこと。

しかし、アサイーボウルを宮崎県で定着させたい思いと、学生の喜ぶ顔を見るために、今は値上げは考えていないそうです。

流行と干ばつの影響でアサイーは品薄になっている

「僕の持論ですが、単価を上げてお客様を絞ってしまうより、まずはアサイーボウルをたくさんの人たちに食べてもらって、その美味しさを広めたい。たくさんの人にリピートしてもらって、宮崎の定番の食べ物になってくれたら結果オーライかなって。まずはお客様に喜んでもらえて、何度も通ってもらうことが大事だと思っています。」

このような折田さんと蓑崎さんの思いが通じ、学生からの支持が特に高いこともmoonの特徴です。

開店時には、学生のメインは専門学校生でしたが、今は高校生や中学生も訪れているmoon。学割サービスも実施したことで、常連になってくれている高校生もいます。

店内にある、お客様ノート(来店者が感想コメントなどを記入できるノート)には、ビッシリと学生たちの感想が書き込まれています。

その感想に、折田さんと蓑崎さんがひとつひとつコメントを残していくところにも、moonのあたたかさを感じます。

学生たちが記入したお客様ノートのページ

「お店が対面だから、気軽に悩みとかも話してくれて。友達や恋愛、学校や親のこととかね。集団でくるとテーブルに座れないから、床に座って食べようとかね笑。若さのパワーをもらえますよ。みんな優しくて素直で…純粋な子が多いです。学生同士の口コミでどんどん広がって、『友達から聞いて食べに来ました』って来店してくれる学生もいる。とても嬉しいご縁ですね。」と蓑崎さん。

学生たちからも頼られる存在の蓑崎さん

「子どもたちの悩みを、大人の僕たちにも安心して話してくれる。距離が縮まって、moonが特別な場所だと思ってもらえているんだと感じます。アサイーボウルが目的だったのに、いつの間にか僕たちに会うことが目的になっている。大切なおこづかいをやりくりし、来てくれていると思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。」と、折田さんも笑顔で話します。

学生との交流を喜ぶ折田さん

県外客は鹿児島や福岡、埼玉や東京からも立ち寄る人も多く、「まさか宮崎でもアサイーボウルが食べられるとは思わなかった」と喜ばれています。そして、ほとんどのお客様がmoonのアサイーボウルの大きさに目を丸くします。その姿を見て、折田さんは心の中で「よしっ!」と思うそうです。

両手で抱えるほどの大きさ

「moonはアサイーボウル以外にも、ワッフルや飲むプリンも美味しさに自信があります。アイスブリュレ、クレープ、ココアなどの飲み物も、お客様の要望にあわせて少しずつメニューも増やしています。」

学生たちの意見も取り入れたメニューもあるそうで、今後の新メニューにも期待が高まります。

人気の香港式ワッフル(800円)と飲むプリン(800円)

たくさんの人が、より気軽に来店できるお店をめざして

最後に、moonのこれからの目標について質問しました。

お店の今後について話す蓑崎さん

「いつか宮崎駅周辺にも出店してみたい。今のこの場所は、お店に入るまでに雨で濡れてしまう。雨の日に来てくれる学生や親子連れのお客様を見ると、申し訳ないなって。

雨風に影響されないで、ベビーカー連れのお客様でも気兼ねなく過ごせる、もっと気軽に立ち寄れる店舗も検討したいです。そして、スタッフも増やしたい。特に女性が活躍できる場所を作りたいです。

お客様からは、長崎や鹿児島など県外も展開すればいいんじゃない?ってアドバイスをいただきました。まだ宮崎県内でアサイーボウルを浸透させることにしか頭にありませんでしたが、実現できたらおもしろいと思います。」

アサイーボウルの魅力を話す折田さん

「アサイーボウルは女性が食べるもの、男性は敬遠するイメージがあります。でも食べてみたら美味しいって言ってくれる男性がほとんど。いろんな人たちに気軽にお店に来てもらって、食べてほしい。食を通じて、幸せな気持ちになってほしいですね。もっとお店の雰囲気、僕たちの思いを知ってもらえるように頑張りたいです。」

今後の目標を話す、蓑崎さんと折田さん。

アサイーボウルを宮崎の定番にしようと奮闘する姿、若い学生たちを大事に思うサービスの数々から、「食を通じて、宮崎の未来をより良いものにしていきたい」そんな2人の熱い思いがあふれていると感じました。

幸せになれるアサイーボウルを食べたい人に、オススメのお店です。