宮崎の良いお店を紹介する「さんぽ宮崎」。本日は宮崎市の老舗ホテル、宮崎観光ホテル内のステーキ屋「宮崎牛専門店 大淀河畔みやちく」をご紹介します。

2006年4月の開業以来、宮崎牛ステーキをメインに提供し、美味しい食事ときめ細かいサービスが人気のお店です。お客様の満足度が高いことでも知られています。
長い間、多くの人たちに愛され続けているその理由とは?
大淀河畔みやちくの料理長で副店長の、中武大祐さんにお話を伺いました。

中武大祐さん
最高のロケーションに高級感あふれる店内
宮崎中心部を流れる河川、大淀川の河畔にある宮崎観光ホテルは、2024年に創業70年を迎え、天皇皇后両陛下も宿泊された格式と伝統があるホテルです。大淀河畔みやちくは、その宮崎観光ホテル西館の2階にあり、宮崎牛の大きなタペストリーが目標です。

大淀河畔みやちくの入口
大きな窓ガラスは開放感があり、ステーキ席が56席、焼肉席が38席で広々とした空間、完全個室も1室設けられています。

河畔が見える店内
鉄板もひとつひとつ綺麗に磨かれ輝いており、高級感があふれる店内です。窓ガラスから見える大淀川と南国の風景で食事を楽しめる、最高のロケーションです。

広々とした店内
ランチは11時~15時、ディナーは17時~22時まで。営業時間前には必ず清掃を徹底し、綺麗で清潔な状態でスタート、いつでもお客様をお迎えできるようセッティングされています。

綺麗に磨かれた鉄板
飲食業では、修行中の若手が掃除などを担当しているイメージも強いですが、職人気質の上下関係などは開店当時からミヤチクには存在しないそうです。
先輩の調理後の後片付けは後輩がしないといけない、といったものはなく、自分の調理の後片付けなどは自分ですることが決まりで、たとえ料理長であっても例外はないそうです。従業員ひとりひとりが、自分自身の仕事に責任を持つ、その意識の高さが美しい店内や丁寧な接客の様子から伝わってきます。
この空間で、日々のランチやディナーを従業員とともに提供している料理長の中武さん。
穏やかな笑顔でお出迎えしてくれました。

出迎えてくれた中武さん
中武さんは料理の道一筋。フレンチレストランで修行し、シェフとして活躍していました。
11年前に鉄板料理人となりミヤチクへ入社、系列店のレストラン「鉄板焼ステーキ 一ッ葉ミヤチク」で約6年間働き、大淀河畔みやちくへ。
現在は料理長と副店長を務め、日々の調理と従業員たちへの教育、メニュー作りなどを担当されています。
「鉄板焼はやはり、お客様の目の前で調理することが、通常の料理人と大きな違いがあります。自分の世界に入り、料理をしたい料理人も多いですが、私にはミヤチクの鉄板焼のスタイルがフィットしました。たくさんのお客様と顔をあわせて調理ができ、リアクションを目の前で感じることができる。とても嬉しいですね。」と笑顔で話してくれました。
お客様がより安心して食事を楽しむために
今回はランチタイムの利用、宮崎牛鉄板焼ステーキランチコースの「クラシックコース(3,980円/税込)※」を注文しました。
※料金は2025年3月時点

100gのステーキは立つほどの厚み
ステーキコースは、旬のサラダ・スープ・宮崎牛ステーキ・焼野菜・お食事・デザート・食後の飲み物が提供され、宮崎牛ステーキの部位やグラム数により、コースの内容が変更されます。
クラシックコースは宮崎牛の赤身が100gのステーキで、平日限定のコースです。
赤身+カルビ、ロース、ヒレなどのコース、海鮮メニュー、お子様用メニューのほか、期間限定の特別コースなども定期的に実施されています。
席に着くと、中武さんが笑顔で
「苦手な食べ物、アレルギーなどはございませんか?」
と話しかけてくれます。
ミヤチクのレストランでは調理前に必ず、お客様の苦手な食材とアレルギーの確認を徹底しています。
「ミヤチクの特色で、パンをデザートにするというメニューがあります。小麦アレルギーの方にはパンのかわりに、フルーツとアイスといったデザートに。大豆アレルギーの方も醤油などの調味料も含め変更します。できる限り、お客様が安心して美味しくお食事をできるよう注意しています。」
ピーマンや椎茸などの野菜が苦手な人の場合は、別の野菜に変更など臨機応変に対応するそう。ただ、宮崎産の野菜は美味しいため、食わず嫌いの人は一度食べてもらえたら、と中武さんは話します。
最初は牛骨のスープ。コース内で提供されるスープではなく、サービスという位置付けの品です。

牛の骨と鶏ガラの出汁で、コクのある深みの牛骨のスープ
牛骨スープを堪能する間に、中武さんは鉄板でサラダに添えるフランクフルトを丁寧に焼いてくれます。

旬のサラダには、ブランドポークを使ったチャーシューと、鉄板で焼きたてのミヤチク特製熟成フランクが添えられています。ドレッシングも人参ベースの自家製。上品な味わいで、野菜のうま味を引き出してくれます。

季節のサラダ、ドレッシングは人参嫌いのお子様にもオススメ
フランクにマスタードをつけ、味のアクセントが楽しいサラダです。チャーシューは季節によって変わるそうです。鉄板ではステーキの添え物とお食事用に使用するために、スライスされたニンニクが丁寧に炒められます。ニンニクは国産で、その中でも大粒が厳選されています。

時間をかけて炒められたニンニク
調理中、様々な雑談で場を盛り上げてくれる中武さん。ホテル内であるため観光客の利用も多く、地元の情報などでもお話を盛り上げるそう。もちろん、お客様同士のお話を最優先にしてくれるため適度な距離感です。
次は、鉄板でゆっくりと温めた宮崎産の白菜をつかった季節のポタージュスープです。

スープは鉄板でゆっくりと温める
「白菜と生クリームにタマネギ、甘みを出すためにジャガイモも入っています。大きな鍋で白菜を6個煮詰め、ほぼ野菜の水分のみでつくりあげています。小さな鍋ではできない美味しさだと思いますよ。」と中武さん。
口に含むと、野菜の旨みとジャガイモの濃厚な甘味が口いっぱいに広がります。季節によって新タマネギを使ったスープなども提供されるそうです。

食前に嬉しい味、季節のポタージュスープ
宮崎牛のステーキをより楽しく、美味しく
前菜が終わり、いよいよメインの宮崎牛のステーキです。厚みのある赤身(100g)に丁寧に下味をつけていく中武さん。立つ程の厚さのステーキ。見た目も期待が高まります。

宮崎牛の焼ける音が室内で響き、丁寧に焼き上げられていきます。基本的に、焼き上がったお肉は8切れ程度にし、4切れずつを2回にわけて提供されます。お客様の食べるペースにあわせて、ベストな状態のお肉を食べてもらうための工夫です。
人数が多い時は、中武さん1人で8人まで対応、その場合は同じタイミングで全員が食べられるよう2切れずつを4回にわけて提供するそうです。

丁寧に焼いていく中武さん
「お客様全員分のお肉が皿にそろい、まずは全員が同じタイミングで食べられるよう計算をして焼き上げていきます。難しいところは、お客様のイメージしている焼き加減と、こちらの焼き加減が違うかもしれない、ということ。その場合は焼き直しにも対応します。」
お客様を観察し、状況に応じて臨機応変に提供スタイルは変えていくという中武さん。提供スタイルなど予約時に要望があれば、できる限り要望通りに対応するとのことです。
焼き色がつくと、大迫力のフランベの時間です。

アルコールを燃焼させステーキに独特の風味が出せると同時に、鉄板料理のライブ感も見逃せません。

目の前の火柱と焼き上がる音で盛り上がることは間違いありません。ショーの一場面のような楽しさです。火をつける前に必ず声をかけてくれて、安全に配慮して慎重に料理してくれます。

フランベで綺麗に焼き上がった宮崎牛のステーキ。見た目、香り、音からも美味しさが伝わってきます。

「赤身も人気ですが、ロースも美味しいです。複数人で別の部位のコースを注文いただいた時は、お肉をそれぞれシェアできるように切り分けも可能なので、そのような楽しみ方のご提案もしています。」焼き上がったステーキを丁寧に切り分け、食パンの上にお肉をのせる中武さん。

食パンの上にのせることで、パンがお肉の余分な脂を吸い取り、よりお肉が美味しくなるというミヤチクのステーキの特徴です。


お肉はソースが2種類、調味料はわさび、お塩、炒めたガーリックチップでいただきます。
「左のステーキ醤油には、わさびをといて食べるのがオススメです。お塩は宮崎の海水でつくられた日南の塩、ガーリックチップは最初に鉄板で炒めていたものを使っています。」
オススメの食べ方も教えてくれる中武さん。
右手のソースは、ミヤチク特製の万能ダレ。お肉以外にも、サラダなどにも使える万能ダレです。程よいタマネギの酸味でサッパリ、お肉の脂と相性も良いです。こちらの万能ダレはミヤチクで販売もしています。

宮崎牛の赤身の歯ごたえ、お肉のジューシーさが口に広がります。ガーリックチップはパリッとして、ニンニク特有の苦みもありません。ステーキのスパイスとして、お箸が進みます。
添え物のお野菜は宮崎県産のほうれん草とさつまいも。鉄板で焼き上げられたお野菜は香ばしく、お肉にもピッタリ。さつまいもは一度蒸したあとに鉄板で焼くため、驚くほどの甘みです。

添え物のお野菜は旬のものが提供される
宮崎牛の確かな美味しさ、好みの調味料で自分の食べ方も探す楽しさもある、大満足のステーキが堪能できました。
お客様に満足いただける料理とサービスをめざして
料理の合間に、大淀河畔みやちくのこだわりについてお話しいただきました。
「私たちが何よりも大切にしていることは『目の前のお客様を満足させる』ということ。この思いは、お客様に立つ従業員から、厨房の従業員まで徹底しています。
お客様の多くは宮崎牛のステーキへの期待とともに、特別な日に来店いただく場合がほとんど。お客様の期待に応えられる料理、どのようなサービスなら喜んでいただけるかを常に考え、従業員一同でお客様をお迎えしています。」

こだわりを話す中武さん
地元のお客様の場合、3月の卒業式のシーズンに家族でお祝い、市役所がすぐ近くにあることから入籍の記念で来店されるご夫婦など、一年に一度、必ずその日に訪れるお客様もいるそうです。時には調理する料理人を指名される方もいるそうで、特別な場所として定着していることがわかります。
様々なお客様との出会いを、笑顔を交えてお話しいただきながらも、中武さんは手際よく調理を進めていきます。
宮崎牛ステーキの後は、お食事のガーリックライスです。最初に炒めていたガーリックスライスを使用し調理する中武さん。鉄板を小刻みに叩く音が、心地よく室内に響きます。


お食事のガーリックライス
ニンニクの程よい香りが食欲をそそります。途中で温かい出汁と梅のお茶漬け風にもできるので、2つの味が楽しめるのが嬉しいサービスです。

お茶漬け風は、漬物のシャキシャキ感もアクセントで美味しい
お茶漬け風のガーリックライスの味は、水分で薄まらず出汁と合わさり、意外なほど上品な味わいにかわります。
「ランチでは少ないですが、ディナーの場合はお酒を飲まれる方が多いので、さっぱりとしたシメで食べていただけるので喜ばれています。」と中武さん。
7月後半から9月頃までは、宮崎名物の冷や汁も選べるそうで、県外のお客様から特に喜ばれるそうです。
最後はデザートと飲み物です。ミヤチクのデザートは、宮崎牛の脂を吸い取るために使っていた食パンがデザートになります。このデザートも目の前の鉄板で調理してくれます。

鉄板でしっかりと焼き色がついていく食パン
「パンは乾燥しているため、バターを多めに引き表面をサックリと焼き上げていきます。」
食パンを鉄板の上でクルクルと回しながら、焼き色を調整していく中武さん。

デザートと食後のお飲み物
宮崎県産の柑橘、ヘベスを使ったシャーベットで、香り豊かでさっぱりとした酸味。

食パンがおしゃれなデザートに早変わり
パンの上に生クリームが添えられており、散りばめられた食用のバラも、パンと一緒に食べられます。パンはサクサク、食後に一息つける美味しさです。
今回、注文したのはステーキコースですが、大淀河畔みやちくでは定期的に期間限定の特別コースも準備されており、旬の食べ物を使った特別な食事を楽しむことができます。特別コースの内容は中武さんが主体で動きますが、従業員たちで考えてメニューを作りあげていくそうです。
「季節の旬の料理はスーパーなどに陳列されている旬の野菜などを観察し、コース内容を考えるなどをします。最低でも3ヵ月に1回、特別なコース料理をつくり、どんなに長くても3ヵ月以上の継続はありません。」

特別コースについて話す中武さん
中武さんは、クリスマスの時期が一番大変かもしれないと話します。
「24日・25日の2日間に向けて準備をしますが、毎年この時期に必ず来店いただけるお客様も多い。だから毎回同じ、ということはできません。基本的にメインの宮崎牛は変わりませんが、前菜などの他のお料理は変化をつけていく。今年はどのようなものなら喜んでいただけるか、みんなで考えていきます。特別なコースは特に時間をかけて準備しており、スープも2・3時間、厨房の鍋の前に立ち続け仕込みをするなど、こだわった料理をお届けしています。」
人材の育成と、時代の流れで思うこと
中武さんは、若手の料理人育成にも取り組んでいます。
飲食業も含め、あらゆる業界で人手不足が加速している昨今、どのように人材を育成すべきかも課題になっています。
「私も含め中途採用が多いため、これまでに培った洋食、和食、中華などの得意分野があります。それらを共有し、それぞれの長所を伸ばした柔軟性のある料理をつくりたいと思います。それを若い子たちに教えていきたい。理想的なのは中途ではなく、一からミヤチクで学んでくれる人材を育てられたらと思っています。」
ミヤチクの鉄板料理の教育も、肉の扱い・焼き方の技術はもちろんですが、伊勢海老・クルマエビ・アワビなどの海鮮は生きたまま調理するため、特に技術を伝えるのが難しいそうです。

様々な場面で、臨機応変に対応する技術が求められる
「どのようにしたら、やる気につなげられるのか、自分の指導方法は本当にあっているのか…。日々、考えています。ただ、焼き加減やお皿から料理をこぼしてしまうなどの失敗をしたときはまず、お客様の気持ちを一番に考えるように指導しています。失敗するのは仕方がない、私でも失敗するときはある。失敗した時はお客様へ真摯に謝罪し、やり直せば良いと伝えています。」
また、大淀河畔みやちくの個室は接待で使われることも多く、例えばゴルフ好きの人が集まる接待の場合は、ゴルフの知識を持つ人や経験豊富な人を料理担当にする場合もあるそうです。
「若手の料理人はまだ、完全個室での鉄板料理の担当はできないようにしています。この場所を担当することを一つの目標としてもらいたいと思っているからです。『完全個室を任せるけれど大丈夫?』と聞いたら、『大丈夫です!』と自信を持って答えてくれるまで、しっかりと経験を積んでもらいたいと思っていますね。」

完全個室は1室のみ、ここで調理できることがミヤチクの鉄板料理人の目標のひとつ
飲食業界の料理人についても、中武さんは時代の流れを感じると話します。
「自分もそうでしたが、どうしても下積み時代はメインの料理を作ってみたい、目立つことをしたいと思ってしまう。ただ、その前に基礎をしっかりと学んでから、挑戦してほしいと思います。
例えば、ミヤチクのコース料理で提供するムース。これは私たちの手作りですが、実は世の中にはムースの既製品はたくさんあります。美味しくなるのであれば、時間やコストを計算し既製品を使うという選択肢は良いと思います。
しかし、ムースを自分自身で作れないのに、安易な既製品に頼るのは良くないと私は思います。昔のように、料理人は何年も修行をする時代ではありません。ただ、効率を求めすぎて大事なものを見失いがちなのでは、と今の時代の流れを見て思います。」

飲食業界も新型コロナ以降、人材不足が続いているそう
料理人は料理さえできていれば良い。中武さんはミヤチクへ入社する前はそう思っていたそうです。ミヤチクにきて、料理人には料理以外にも学ぶべきものはたくさんある、大事なことに気付くことができたと、話してくれました。
ミヤチクのレストランの存在感を、強めるために
最後に、 大淀河畔みやちくの今後の目標についてお聞きしました。
「宮崎牛の知名度をあげる、というのはミヤチク全体の使命です。これまでの事業で、地元の人たちも含め、ミヤチクは加工工場や加工品などをつくる会社、お肉を卸している会社というイメージが強いのでは、と思います。
私たちの働くミヤチクの外食部門は、それに負けないぐらいの存在感にならないといけないと感じます。『ミヤチクと言えば、レストラン。ステーキと言えば、ミヤチク。』と、たくさんの人に言ってもらえるよう、レストランの魅力を強めていきたい。
大淀河畔みやちくは、ミヤチクのレストランの中でも、カジュアルではなくフォーマル、特別な日に利用してもらうことが多い傾向です。そのため、『ご褒美の場』となれるお店をめざしたいと思います。
お客様が、『次もここで食事をするために頑張ろう。』『何か目標を達成したら、頑張った自分へのご褒美にここで食事をしよう。』そう思っていただける、特別なお店をめざしたい。お客様の期待に応えられるお料理、また来たいと思ってもらえる店づくり、目の前のお客様を満足させるおもてなしを、引き続き頑張りたいと思います。」

大淀河畔みやちくの看板と中武さん
誰かと話す時や調理中も終始、穏やかでにこやかな中武さん。空気を和ませ、あたたかい雰囲気にしてくれます。その柔らかい笑顔の中には、大淀河畔みやちくから受け継がれてきた、必ずお客様を満足させる、という揺るがない信念が込められているように見えます。
その信念を従業員ひとりひとりが持ち、丁寧にお客様と向き合っていることが、大淀河畔みやちくが愛され続けている理由だと感じました。特別な日、自分へのご褒美にぜひ訪れたいお店です。