宮崎の良いお店を紹介する「さんぽ宮崎」。
本日はスイーツ店「宮崎氷果店」をご紹介します。
2019年7月に青島参道南広場前で青島店がオープン。かき氷やアイスクリームをはじめ、カフェメニューなどを販売、夏シーズンには県内外から多くの人が訪れ長蛇の列ができるほどの人気店です。2022年3月には加江田店もオープン。宮崎氷果店のメニューはすべて、無添加・白砂糖不使用、手づくりが特徴です。
例えば、かき氷のシロップはもちろん、アイスのコーンまで手作りという徹底したこだわり。そして、毎年アップデートされるメニュー、様々な食材を使用した魅力的な季節限定のメニューなど、日々進化を続けています。
無添加・白砂糖不使用・手づくりのこだわりと、多くの人に支持される魅力とは?
オーナーの三宅亜矢さんへお話を伺いました。

ゆっくり、落ち着いて「かき氷」を食べられる空間を
今回、訪れたのは加江田店。
220号線沿いの宮崎県総合運動公園近くの「MIYAZAKI BEACH CLUB」内の一角に店舗があります。

宮崎氷果店 加江田店のあるMIYAZAKI BEACH CLUB
空港・海とのアクセスが良いことからサーファーたちが集う場所と知られ、サーフボードなど大きい荷物の出入りのため、広々とした駐車場が完備。屋外にも座れるオープンテラス、店内もゆったりとした開放感で快適な空間が広がります。

笑顔で出迎えてくれた三宅さん
三宅さんは岡山県出身、地元岡山でもかき氷屋を営んでいます。サーフィンが好きだったこと、宮崎の豊かな自然に魅かれたことなどから家族で移住を決意。その後、宮崎屈指の観光スポット、青島神社がある青島参道南広場前に青島店をオープンします。
「青島店のかき氷が好評で、たくさんの人たちにご来店いただけるようになりました。ただ、駐車場もなく並んで待つ間には、夏の強い日差しをさえぎるものもありません。特に小さなお子様や年配の方など、家族連れの方々には負担が大きく申し訳ない気持ちでした。」と三宅さん。

青島参道南広場前にある青島店
その時に出会ったのが「MIYAZAKI BEACH CLUB」でした。駐車場も広く、店内やオープンテラスの日陰で家族たちとゆっくり過ごせる環境であることから、三宅さんは加江田店のオープンを決めたそうです。

加江田店の入口にある看板

店内の様子

2人がけのテーブルでゆったりと過ごせる

雑貨など、店内には様々な商品が並べられている

屋外でもかき氷が楽しめる
無添加・白砂糖不使用・すべて手づくりのこだわり
三宅さんが一貫してこだわるのは、無添加・白砂糖不使用、メニューのほとんどが手づくりなこと。体が食べ物でできているからこそ、体に良い物、しっかりと栄養を摂る重要さを伝えたい、と話します。そのきっかけは、夫が癌を患ってしまったことでした。
夫の闘病を支えるため食事管理をし数々の市販品の成分や栄養を研究、食と栄養をストイックに学び続けた三宅さん。スーパーの市販品などが買えなくなるほどでした。

こだわりについて話す三宅さん
「添加物が悪い、ということを伝えたい訳ではありません。ただ、添加物が含まれた食事をすると、体の免疫が添加物の処理に栄養を使ってしまいます。そのため、しっかりと栄養がとれる食材を摂ってほしい、という思いです。手づくりにこだわることも、私自身で栄養のある素材を選択でき、それを提供できるからです。」
しかし、日々の食事を無添加で手づくりする負担は大きく、息抜きに外食をしようと思った三宅さんでしたが、当時の岡山には無添加で体に良い物を提供してくれるお店は少なかったと話します。
「添加物が入っていない、栄養素が多い食事を自分でつくるしか選択肢がありませんでした。息抜きもできないことがストレスになってしまった。この頃の経験から、健康に気をつけている人、私と同じように家族の健康を支えている人にとっても、安心して利用できるお店をしたいと思っていました。」
自分が食べていない物を、お客様に提供するわけにはいかない、そう思った三宅さんは岡山のかき氷店の方針を変更、無添加で白砂糖を使わないこだわり、豊富な食材からたくさん栄養を摂れるメニューの提供を積極的にはじめます。
その思いは、宮崎氷果店へ受け継がれ洗練されていきます。体に優しい無添加の調味料などの使用、新鮮で栄養の多い食材の仕入れ、かき氷シロップやアイスクリームなどは、乳製品アレルギーの人や健康に気をつかう人でも安心して美味しく食べられるよう、プラントベースも選択できる工夫など、宮崎氷果店のメニューひとつひとつに三宅さんの思いが込められています。

プラントベースのアイス(ストロベリーソルベとスピルリナココナッツ&パイン)
意外と知らない、かき氷の美味しい季節
今回、特別に許可をいただき、こだわりのかき氷の調理風景も撮影させてもらいました。
調理するのは「桜と抹茶」のMサイズ。
まずはアイスシェーバーでかき氷の土台をつくっていきます。

宮崎氷果店のかき氷は、霧島裂罅水100%のミネラルアイスが使用されています。裂罅(れっか)」とは、地殻の割れ目や亀裂のことで、霧島裂罅水はその名の通り、霧島山の地殻の裂け目を通じて湧き出る貴重な軟水です。
「意外と知られていないのですが、かき氷が一番美味しい季節は春と秋です。この季節は、特に氷の状態が良いので美味しく食べられます。夏だとすぐに氷が溶けてしまうので、かき氷の本当の美味しさをゆっくり味わえる春や秋にぜひ食べてもらいたいですね。」と三宅さんは話します。
繊細な氷で作られているため気候に影響されにくい時期がおすすめのほか、春や秋などは新鮮で美味しい旬の果物などがそろうので、より美味しいかき氷が提供できるそうです。

カップいっぱいにかき氷を入れ、抹茶シロップを追加。
その上に桜の葉を練り込んだ白あん、白玉、モナカを加えます。もちろんすべて無添加、こだわりの自家製です。これで完成ではなく、さらに氷を加えていきます。

ふわふわの氷で、囲むように優しく丁寧に成形します。

さらに抹茶シロップを追加。この抹茶は有機茶葉の「ひなた」を使用、宮崎県西都市内で唯一、抹茶の原料の碾茶(てんちゃ)を生産するマルイシ製茶園の有機茶葉のみで製造されたものです。有機栽培で高品質、通常の料理用抹茶よりも色濃く、うまみが強く苦味は少ないことが特徴です。

宮崎氷果店のかき氷は、特にシロップがこだわり。メニューの多くは、どこから食べてもシロップの味を楽しめるよう何層にも丁寧に作られています。霧島裂罅水のミネラルアイスは、ふわっとしたまろやかさとキレの良さがあり、シロップの風味をより一層引き出してくれることも美味しさの秘密です。

さらに氷を追加。今回はMサイズですが、それでもなかなかのボリューム。

再び氷で丁寧に包み、こんもりと綺麗な形に整えられていきます。

さらにシロップを贅沢に加えていきます。氷がきめ細やかで、鮮やかな緑が輝いて見えます。シロップがたくさん加えられているため、氷が溶けてもシロップの味はしっかりと味わえそうです。

この上に、特製の桜エスプーマをトッピング。
仕上げにイチゴ1個をスライスし、桜チップをふりかけて完成です。

既製品のシロップとは違い、着色料なども入っておらず無添加、自然で優しいコントラスト。いちごの鮮やかな赤色、桜のチップがアクセントの可愛いかき氷で、食べるのがもったいないと思うほど。
ふわりとした氷をひと口運んだ瞬間、ふんわりと広がる桜の香り。まるで春の風が頬を撫でていくような、やさしい余韻が残ります。主役の抹茶は、ほろ苦さの中にしっかりとした旨味があり、桜エスプーマのふんわり甘い香りと絶妙なバランスです。

桜と抹茶
食べ進めるにつれて、隠れていたもちもちの白玉と自家製の桜あんが顔を覗かせ、スプーンを進めるたびにちょっとした宝探しのようなワクワク感も。
自家製の白あんに練り込まれた桜の葉のやさしい塩味が、味わいに奥行きを加え、最後のひと口まで新鮮な美味しさに。
また、黒糖モナカのサクサク食感が、またいいアクセントに。米粉で焼き上げたというこだわりも感じられ、一口ごとに「春っていいなぁ…」と心が和みます。

年を重ねるごとに、進化するレシピ
メニューのほとんどは三宅さん自身が試作を重ね、スタッフから意見や調理をサポートしてもらい作り上げるスタイル。食材の組み合わせから味まで、三宅さんの頭の中ではすでに完成されており、それを再現し近づけていくとのこと。
宮崎氷果店のかき氷は、食べる途中で変化や発見の感動があり最後まで飽きがなく楽しめるものばかり。三宅さんのレシピは体に優しいこだわりだけではなく、実際に食べる人たちの顔をイメージして作られていると感じます。
「外国に行った時に、日本とは違った文化、色彩や料理、あたらしい食材と出会ったときにレシピのアイデアがわきます。スタッフが食べたいと思った食材でメニューを考えることもあります。とにかく、インスピレーションが降りたらすぐ挑戦したいので『また新しいレシピですか?』と、スタッフを困惑させているかもしれません。」と笑顔の三宅さん。

メニューの告知などはInstagramがメインですが、そのほとんども三宅さん自身が制作や運営を担当。多くのフォロワーを生み出すことに成功しています。
「レシピをつくる上で、見た目は特に重視しています。五感にアピールする中でも、視覚はとても重要です。写真や動画で、『映え』を意識した発信を心がけています。動画の編集は新型コロナの影響で学び、実際に岡山のお店でテイクアウトの告知動画を作成したところ、大きな反響がありました。それ以降、宮崎氷果店でも定期的な動画の発信を続けています。」

統一されたデザインに、商品が美しく並んだ宮崎氷果店のInstagram(写真:宮崎氷果店提供)
華やかなメニューの中でも、日向夏、きんかんなど、宮崎県産の果物を使ったかき氷は観光客にも人気のメニューです。食材は三宅さんが良いと感じたものを見つけ、農家へ直接交渉して仕入れているなど、徹底したこだわりです。
お店の知名度が広がったことから、逆に農家側から食材を使ってほしいという提案もあると三宅さんは話します。
「スイートコーンフロマージュというかき氷メニューは、どすこいファームさんから宮崎県産のスイートコーン(横綱コーン)を使ってみませんか、と提案していただき考えたものです。コーンという食材には、これまで挑戦したことはなかったので難しいかな…、と最初は思っていたのですが、試作してみたらすごく美味しく新発見でした。スタッフも大好きなメニューです。」

スイートコーンフロマージュ(写真:宮崎氷果店提供)
■スイートコーンフロマージュ
コーンの季節にしか食べられない季節限定メニュー。スイートコーンの素材を活かし、甘さ控えめの仕上がり。トップにマスカルポーネのエスプーマ、塩、ブラックペッパー、パルメザンチーズがアクセントになったかき氷。
メニューは一年を通して、常に考えている三宅さん。さらに、冬の1月〜3月の店舗休業期間にすべてのメニュー、シロップなどのレシピを見直しているそうです。
「年を重ねるごとに、より良いものにしたい、美味しいかき氷にしたいと思います。最初は完璧じゃなくても、進化していくお店でありたい。岡山で最初にはじめたシロップと、今のシロップを比べると、きっと美味しくなっていると思います。」そう胸を張る三宅さん。
その言葉通り、三宅さんはかき氷にとどまらず、アイスクリーム、冬の期間のスイーツメニュー、調味料や雑貨の販売、店舗監修の支援を手がけるなど、忙しい日々を送っています。

三宅さんが岡山で手がけた無添加の韓国万能タレ

三宅さんが出会った体に良い製品なども店内で購入できる
「今は仕事を頑張りたい気持ちでいっぱい。仕事をしていないのは、海に入る時ぐらいかもしれません。その時は何も考えないで頭をリセットしますね。」
サーフィンが趣味の三宅さん、宮崎はオンとオフの切り替えができる環境で充実しているようです。まだまだアイデアに手が追いついていないレシピや、挑戦したいことがたくさんあると三宅さんは目を輝かせながら笑顔で話します。

人生のどん底、自分を奮い立たせてくれた夫の存在
充実した日々を送る三宅さんですが、現在に至るまでの道のりはとても大変だったと三宅さんは話します。
「実は青島店をオープンした時、私の人生はどん底だったと思います。夫と宮崎へ移住してきましたが、岡山のお店もあるため半月は宮崎、半月は岡山と行き来していました。これが原因で夫とすれ違いが起きてしまいました。」

人生を共に歩み、闘病を支えてきたことから心の葛藤もあるなか、お子様も大きくなっていたこともあり離婚を決意。当時は精神的、経済的にも苦しい状態だったと三宅さんは話します。
「悔しかった。見返してやる、自分一人でもやってやる、そう自分自身を奮い立たせて青島店をオープンしました。」
目に少し涙を浮かべながら、この経験があったからこそ今の自分がある、と力強く話してくれました。そして、青島店をオープンし素敵なスタッフたちと出会い、たくさんのお客様にも支えられたことで人生が好転したそうです。
「それまでの私は自己肯定感が低く、自分には何もできないと思い込んでいました。でも、自分は一人でもやれるんだ、と自信がつきました。私はきっと青島店をオープンした頃の自分と比べると、180度変わり人として成長できたんだと思います。」
そして、夫が旅立つ最後の1年間は再び過ごし、最期を看取ることができ、その時に強くなった自分を実感できたと当時を振り返ります。
「本当にたくさんのことがありましたが、すべての出来事が感謝の気持ちに変わりました。今でも休業明けの青島店のオープン時、スタッフやお客様の顔を見たときに、感謝の気持ちで泣いてしまいます。ちょっと重いと思われているかもしれませんね。」
涙をぬぐいながら、笑顔をみせる三宅さん。これからも、人生が変わるきっかけとなった宮崎へ感謝の気持ちを還元するために、宮崎の魅力をたくさんの人に広めていきたい、と意気込みます。

人のあたたかさを伝え、プロデュースや女性支援を
最後に、宮崎氷果店のこれからの目標について質問しました。
「メニューについては、やはり、夏以外のシーズンの魅力、特に冬は集客力が弱いので魅力的な冬のメニューを強化したいと思います。加江田店では、台湾スイーツの豆花、お団子のメニューなども強化したいですね。美味しいかき氷が提供できる、春と秋にも訪れたいと思ってもらえるメニューを考えたいです。
店舗のコンセプトも少し見直したいと思います。これまでは、おしゃれを強く意識してアピールしていましたが、これからは、ありのままの人の魅力を出せるお店にしていきたいです。スタッフたちにも、お客様たちへの接客、思いやりの意識を高めてもらい、お客様と積極的にコミュニケーションができるように教育していきたいです。すぐには難しいかもしれませんが、人としての魅力やあたたかさが伝わる店舗にできればと考えています。」
そして三宅さんは、自身の新しい目標についても話してくれました。
「これからは、積極的にプロデュースの仕事をしたいです。名古屋や日向市での店舗の監修もさせていただき進めています。アイデアはたくさんあるので、かき氷に限定せず挑戦していきたいです。私の思い、無添加で手づくり、体に優しい食材を使うこと、地域に密着することをベースとして、飲食店を経営したい人のお手伝いができればと考えています。」

「そして、私のこれまでの人生から、女性の自立はとても大事だと学びました。精神的、経済的な自立です。自立をめざしたい女性たちや、シングルマザーの人たちへの支援など、私の経験を何らかの形で役立てればと思います。人を輝かせる側で貢献する、それが今の私の最終目標です。そのためには、まずは自分自身の実績を積むことを頑張りたいと思います。」
今後の目標を話す三宅さん。その表情には、自信と力強い美しさ、前向きに人生を歩む力が満ちあふれているように感じます、
夫の闘病を支えながら生まれた、無添加・白砂糖不使用・手づくりのこだわり。視覚と味にこだわり、試行錯誤して生み出されたレシピの数々。お客様には体に良いものを食べてほしいという願い、感謝の気持ちを込めて行動している三宅さんだからこそ、その心のあたたかさに触れた多くの人が共感し、宮崎氷果店の魅力を生み出しているのだと感じました。
詳しい店舗情報はこちら
宮崎氷果店 加江田店
電話:0985-58-3820
住所:〒889-2161 宮崎県宮崎市加江田2403
交通手段:運動公園駅から徒歩6分
営業時間:11:00〜17:00
定休日:不定休
駐車場:あり
Instagram:https://www.instagram.com/miyazakihyokaten/
宮崎氷果店 青島店の店舗情報はこちら
https://www.miyazaki-sanpo.jp/store/miyazakihyoukaten_aoshimaten/